酒 の 失 敗 -1

石神井寮だったころ

寒い季節には西武新宿線上井草駅の線路を
渡ったあたりにおでんの屋台が出ていた
一時期、帰りにここでコップ酒を一杯やるのが

クセになり、っていうか
寮の食事がまずくって、酔ってないと
食べれなかったんだよね
( 後に寮母がイガラシさんになって
劇的美味しさになったけど )
 

この日も一杯やって、イイ気分で
真っ暗な千川通りを渡っていたら
突然すごい衝撃があり、気づくと
眼前に、目を見開いた顔があった
ボクはあわててボンネットから飛び下り
ごめんなさい!
叫んで、走って現場から逃げた、けど
靴の片方が無いのに気づき戻ってみたら
車はいなくって
暗がりに靴が転がっている・・・

酔って歩いてて車にはねられたんだよね
幸い何の支障もなく現在に至っています
 
  

酒 の 失 敗 -2

神田神保町の頃

住み込みの若いモンは
ストレスがたまる 
だから、呑んでウサ晴らし
 
若いモンが呑むとロクなことはしない 
喧嘩をしたり、夜中に神保町界隈を走り回ったり
屋上から物を投げたり
社内に消化剤をまいたやつもいた

歌舞伎町の暴力バーへお金をかき集め
同僚を助けに行ったこともある

夏のある日、ボクは酔っぱらって

屋上にある給水塔の建屋の上に登り

何も考えず、バンザーイと叫んで
飛び下りた・・・瞬間
  ヤバイ!
我にかえり反転して壁にへばりつき

 (若者の反射神経は素晴らしい)
ズルズル壁面を擦りながら3〜4m落下
体前面、血だらけの擦過傷と足首のネンザ
 
思いきり飛んでいたら6 階の高さから
サヨウナラするところだった
軽率を絵に描いたような性分は
 いくつになっても治らない・・・・

酒 の 失 敗 -3

娯楽室で呑んで騒いでいるうちに
寮のボクの部屋のカギを内から
同室のウマにかけられてしまった
 
酔っぱらっていたボクは
5 階の外の30cmほど出ているヘリを伝って
自分の部屋の窓へ行き
開けてくれるまで

怒鳴り、たたき続ける
 

 中学の落下事件がトラウマになって

 超のつく高所恐怖症のボクだったはず
 親父が言ってたように
 ホントに酒は恐ろしい
 
 

 

             

酒 の 失 敗 - 4

 日本橋で残業を終え、大尊敬する ウチヤマ先輩と呑み
そのあと、新宿のクラブへ連れていってやる
ってことで地下鉄に乗った。
乗ってしばらくして尿意をもよおしてきた。
途中、停車するたび、なにげなくトイレを探すが
あるわけない。

吊り革にぶら下がり、足をクロスさせ
ポケットに手をつっこみ、出口を押え
脂汗を流しながらしばしガマンをしていたけれど

電車が大きく揺れた途端、股間が温かくなっていた。

 下を見ると床に水たまりができてて
それが電車が揺れるたびに左右にツーッと流れる。
ボクは針のむしろに立たされている気分・・・
 
 新宿へ着き、靴をグチャグチャ鳴らして

クラブまで歩き、挨拶もそこそこ
トイレへ直行、中で下半身のすべてを脱いで
便器の中で洗い、よーく絞って皺くちゃになったのをはき
なにくわぬ顔で席に戻ったら
ママさんが、おしぼりを差し出し
 < おそかったわね? > < ハハ、ちょっと >
ボクはバレてないと思っていたけど
そんな訳ないよねー。
 

 ウチヤマ先輩

 反社の若頭のような風貌だけど、KO大学卒で
在学中はラグビー部。バリバリの営業マン、
気取りも裏表もなく、率直な物言いで
6〜7才下のボクのような若僧にも
イッチャマ、どう思う?
なんて普通に意見を求めてくる。
 スポーツ万能、ギターを弾きながら歌う
敬意をこめて、ASAKURAの若大将と陰で呼んでいた。
なんでこんな人が、こんな会社に?
って不思議だったけど、家業を継ぐための修行だったらしい。
いい意味での育ちの善さを感じさせる唯一無二の人だった。

 石神井寮で一年余、一緒だったから
彼のウイークポイントも知っている。
それがまた可愛いんだなぁ(笑)

昭和の子供たち・やよい町15番地