美 し い 十 代

 たまーに食えるラーメンは贅沢なごちそうだった。
学校から歩いて2分ほどの
交差点角の食堂でしか食ったことがない。

 裕福なマツ は、いっつもカツドンを食っている。
< いいもん食わんな、どーすんがィ >
に、食ったことのないボクはカチンとくるが

< マムシ酒のんだらおまえ、体 カッカして
  チンチン・バンバン、鼻血ブーやぞ >
てな彼の話に意味もわからず喜んでいた。


 この食堂で見た平凡だか明星っていう雑誌に
< 美しい十代・三田 明 > という特集があって
なにげなく見てたら、彼の歌う< 美しい十代 >が
偶然、ラジオから流れてきた。
田舎の薄汚い十代は溜息をつく・・・。
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峠 の 釜 め し

 秋に、ケイゴと○崎の三人で
入社面接を受けに東京へ行った。
上野までは汽車で10時間もかかったが
緊張感はまるでなく修学旅行気分。
噂に聞いた駅弁、信越本線 横川駅の
峠の釜めし>をムチャクチャ楽しみにしていた。

 高校を卒業するまで、修学旅行以外で
他県へ出ることはめったに無く
都会へ行くのが嬉しくってしかたがない。
面接に行くっていうのに
子供じみた情けない田舎の高校生である。

 横川の駅で釜めしを買い
嬉々として食べようとしたら 
  アッ!
ボクは手を滑らせ、床にカッポンって感じで
釜めしを完全さかさまに落っことしてしまった。
コロコロ転がるウズラの卵・・・・
独りだったら、なんとかして食っただろうに
楽しみにしてた釜めし・・・・・。
涙を飲んで処分したけど
二人が美味しそうに食べてるのを見てても
腹が立ち、腹が減るばっかり、しかたなく
若者のバイブル、 平凡パンチ を出して見てたら
○崎に<イッチャマサンってスケベね!> って
キツク言われ、またガックリ・・・・。
しかし、禍福あざなえる縄のごとし
この後イイことが待っていた。


 結局、この会社は三人とも断ってしまったが
もし、ケイゴと一緒に入社してたら
どうなっていたんだろう・・・・

今でもときどき妄想する。

昭和の子供たち・やよい町15番地