お ん が く - 1

 アルバイトで貯めたお金で
レコード・プレーヤーを買った。
4000円 ぐらいだったと思う。
ドーナツ盤は当然、 LP でもなんとか
かけれるけど・・・
スピーカー内蔵で情けない音しか出ない。
でも、ボクはすっ
ごく文化的になったような気分。
それまで、ラジオで聞いていた好きな曲を

お金を貯めては駅前の開進堂へ買いに行く。

一番最初に買った レコードは
トニー・ダララ < ラ ・ノビア >
その後は アメリカン・ポップスに夢中
コニー・フランシス がお気に入りだった。
 

お ん が く - 2

 テストで早く帰れた日
肉屋で コロッケをたくさん買い
ボクの部屋で ケイゴ
同じ交響曲の 違う指揮者による
表現の差についての考察
といった風なことをした。

4000円の レコード・プレーヤーで

ケイゴ が言うように

音の厚みやら 深みがわかるのか
マユツバだったけど
ボクは、わかったような顔をして
そーだ、そーだ、と うなづいていたが

コロッケ片手に忘我の境地で
ワリバシのタクトを振る
ケイゴ を見ていると
ボクはどうしていいのかわからない・・・。
 
 ケイゴ は終生クラシックから離れることなく
56才で逝ってしまう。

お ん が く - 3

 テラコシ先生んとこへ
ケイゴヤマダ
遊びに行ったことがある。
が、その恐ろしく マニアックな世界に
おどろいた。
手作りの アンプやらスピーカー
プレーヤーのアームは ワリバシ!
そのゴチャゴチャした配線の中から
響き出る音には感動したものだ。
しかしこの連中、
交響曲の演奏中
ジッとしていない。
半開きの眼で ワリバシで指揮をする。
言ってることも難解でサッパリ わからない。
ワリバシ が好きなことだけは
よーっく、わかった。
 

お ん が く - 4

 当時、助手だった テラコシ 先生が
休んだ デザインの先生の代理で
初めて ボク等の教壇に立った。

何の講議をするんだろーと期待してたら
デザインとは何の関係もない
当時、若手新進気鋭の指揮者 小沢征爾の
< ボクのヨーロッパ音楽武者修行 >
という(だったと思う)本の朗読をはじめた。
自分で読みながら感動してる 先生を
アホか、と思ったけど
そのうち引き込まれて・・・
50年以上も前のことを覚えているんだから
印象的な授業だったんだ、たぶん。
以来、小沢征爾さんの名を耳にする度
この日のことを思い出す。
テラコシ 先生は後で エライ 叱られたらしい
・・・・・


 テラコシ 先生、オペラ歌手みたいに 声はり上げて
よく歌っていた。
信じられないほど上手かった
その先生が NHK のど自慢トヤマ大会 に出場し
カンツオーネを歌って予選で落っこちた
っていう噂。
あんなに上手いのに落ちるんかぁ・・・・
悪くって真偽の程は本人に聞いていない。

昭和の子供たち・やよい町15番地