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美術部の後輩 K子 は
ヤス に惚れていた、らしい。
ヤス の卒業が近づき
彼女もそれなりに思いつめたんだろう
< 映画のチケットがあるんだけど
,,,,,,,,,,,,一 一緒に観に行かん? >
と、けなげに誘ったのである。が
< 行かん! > とアッサリ断られた。
それを見ていたボクは 同情し
< オレと行こう! >
と、そのチケットで第一劇場へ行き
< サウンド・オブ・ミュージック >
を 一緒に観た。
K子 は可愛いけど関心のなかった ボクは
一人、映画に没頭
彼女の哀しみは そっちのけで
ジュリー・アンドリュースに夢中になってた。
これが女の子と観た、はじめての映画。
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高校生最後の期末試験の現代国語で
卒業にあたっての一句というのがあり
三年間 螢の光で 目を痛め と書いて
職員室に呼び出され少々の説教を受ける。
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社会へ出なくっちゃいけない・・・っていう
未知への不安と自堕落な生活への未練
複雑な想いで迎えた卒業式。
歌うのは苦手だけど
螢の光 や 仰げば尊し は
目一杯大声で歌った、が
後ろから聞こえてくる
演歌大好き ヤス のコブシの効いた
螢の光 がツボにはまってしまい
こらえるのが大変だった。
1966年3月 中途半端に髪が伸びた約400名は
県立高岡工芸高校の門を出る。
担任のイイダ先生には感謝しかない・・・。
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K子 の件は他人事ではない・・・・
卒業式も終わり、就職も目前
気弱なボクもあせり、意を決して C子に
トヤマで映画を観ませんか
駅で待ってます・・・・と手紙を出す。
当日、オヤジのジャケットを着たボクは
駅前でパチンコをしたりしながら
ソワソワ、ドキドキ、イライラ・・・
二時間も前から待っていた。
遠くに 制服姿の彼女が見えた時は
死ぬんじゃないか、ってほど心臓がバクバク。
天に昇りそうになってる ボクに
< 今日は用事があって行けません・・・>
ガーー--ン!
ヤケクソで 強引にプラット・ホームへ連れ出し
パチンコで取ったチョコレートを食え
なんて訳のわからんことを言いながら
トヤマ行の電車を待ってると
向かいのホームに電車が止まり、去った後の
目の真ん前に アキラ が立っている!
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マズイ と思った瞬間
あのバカは ホーム中に響く、大っきい声で
< オーイ! イッチャマー、どこへ行くがーーっ >
死にたくなった・・・・。
緊張感、高揚感、挫折感、失望感、絶望感・・・
グチャグチャ気分で
トヤマのタカラ劇場で観たのは
大好きな オードリー・ヘプバーンの
< マイ・フェア・レディ >
彼女とまともに喋ったのは、この日が初めてだった。
( まともったって、シドロモドロだったけど )
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