美 術 部 -1

一年生の中頃、ヤマダに誘われ美術部に入る
ほんとは少し背が高かったので
柔道部に入れられそうになり
美術部に逃げ込んだ、という不純な動機

絵を描いて遊んでるんだと思ったら
デッサン ばっかり
手を動かさず、木炭を消すための
食パンばっかり食っていた
生きていない、白い石膏像を描くのは
どう言われようが、まったく面白くなく

デッサン っていうと逃げまわり
サボってばかりの不真面目部員
在籍中 1 枚も まともに仕上げたことはない
三年になり
ヤスイ部長、真面目な クロダ 副部長
ボクは 一番ふさわしくない会計となり
当然、乱脈経理で
いっつもわけがわからなかった

美 術 部 - 2

人物デッサン のモデルになった
一学年下の C子に一目惚れ
やっぱり石膏なんかより
生きてるほうがイイに決まってる!
C子を ジャックリーヌ と勝手に命名
ボクはこの頃
好きな外国小説にでてくる女性の名前を
関心のある女の子につけて
密かに喜んでいた
例えば・・・・

学校祭の食堂に入ると グラッツィア が
きつねうどんを食べている
< ここで食べなさいよ > って言うので
彼女の前に座ったら 2 卓むこうに
ジャックリーヌ が コレット とぜんざいを
食べているのが見えた
ボクの心臓は早鐘を打ったようになり・・・
と、こんな具合
バカにつける薬はない・・・

美 術 部 - 3

三年の夏休みに
能登の福浦漁港 へ合宿に行く
美術部で
合宿というのは初めて
で、すっごく楽しみにしてた、が
天気は良くなくって、肌寒い 2泊3日だった
合宿だから 当然
スケッチと 10号ぐらいの油彩が
課題だったような気がする、けど
油くさい漁港で泳いだり
( 地元の人に
aaaよく こんな所で泳ぐねぇ、と呆れられた )
魚釣りをしてた記憶しか残っていない

先生も、昼から酒を呑んでたみたいだし・・・
部長の ヤスイは なぜか参加してなかった
かわりに、副部長の クロダだけが
真面目に後輩を指導していた印象

民宿 2泊4食で1000円 交通費 600円
だったと思う
今は昔、 でも・・・安い
当然、コンビニ、スーパー、自販機なんぞ
無い頃の話


そういえば
卒業真近、クロダのお母さんが三年の美術部員を
自宅へ招き すき焼きを御馳走してくれた
いままで食べたことのない 贅沢な美味しさだった
ボク んち同様、クロ んちも
決して 豊かではなかったはず、なのに・・・
急に思い出しました
あらためて お心遣いに、深く感謝

 福浦港での ボク クロダ  ヤマダ
ボクは格好だけ、遊んでばかりでなにも描かなかった。

昭和の子供たち・やよい町15番地