転 落 - 1

 軽率を絵に描いたような出来事です
今さらですが
御迷惑をおかけした学校関係各位には
深くおわび申し上げます。

 新校舎は少しづつ出来上がり
1 年生の中途に引っ越したけど
まだトイレ部分などは工事中だった。
ボクのクラスは最上階の3 階
ある日、同級生とカクレンボをしててて
ボクは立ち入り禁止の工事区間へ行き
トイレのドアを開け

後ろ向きで入りかくれようとした。
ところが、そこには床が無く
そのまま落下・・・。

転 落 - 2

 すごい衝撃を受け、何がなんだか解らぬまま
ドアをあけると 1 階だった。
右手を見ると薬指と小指のあいだを
鉄骨で引っ掛けたんだろう
裂けていて血が吹き出している。
そこでは同じクラスの女の子が

掃除をしてて
突然ドアを開け、血を流し出てきた
ボクを見てビックリ
< どうしたの!> ってハンケチをくれたらしい。

ボクは なんにも答えず
無意識のうちに階段を上がり
元の場所へ戻ってダウンしてしまった。

転 落 - 3

 3 階でダウンしたボクの事情を知った
同級生はお祭り騒ぎ。
すごいのー!、イッチャマが
     3 階から飛び下りた!

面白がってる同級生にワッショイワッショイ
担がれて、また階段を下り1 階の保健室へ。

その間は、痛くって痛くって声も出ない。

 保健の先生にさんざん叱られて
即、タクシーで病院送りとなる・・・。

転 落 - 4

 容態が悪いと連絡を受けたトーチャンは
早々にかけつけてきた。
トーチャンの顔を見た途端、涙を流してしまい
男のくせに泣くなバカヤロウ > と叱られたけど
ドジについては何も言わない。

 手術の控え室で隣に同じ年頃の子供が寝ていて
おたくはどーしたんだ?
トーチャンが聞いたら
その子は 2 階から落ちたらしい。

偶然だな、うちは3 階から飛び下りたんだ > と
自慢そうに言ったのには少し腹が立った。
とりあえず手の縫合と足にギブスをつけ

手の裂傷、足の骨折、内臓破裂、全身打撲で
今夜が峠だという大袈裟な診断。
この病院の院長は軍医上がり、乱暴、テキトーで
評判だったらしい。
縫合もやたらと痛くって時間がかかり

今もしっかり痕が残っている

       

転 落 - 5

 入院初日、峠だということで
トーチャンがベッドの下にゴザを敷いて
泊まってくれる。
生まれて初めての、病院の固いベッドで
なかなか寝つけずにいた夜中
寝返りをうったひょうしに
トーチャンの上に落っこちてしまった。
全身打撲の痛みやら足のギブスやらで

動けないし、声も出ない。

トーチャンはすっごい イビキをかいていて
なかなか気づいてくれない。
しばらくトーチャンの上に乗っかったまま・・・。

へらず口をたたいていても

トーチャンは心配し、疲れてたんだろうと思う。
けど、この時は 何のための付き添いなんだ

と、
えらく悲しかった。

転 落 - 6

 若いから回復も早く
内臓出血もすぐ止まり
病室も変わってひと安心。
そうなると病人?は
あれが食べたい、これが飲みたいと
わがままになる。
初めてコカコーラなんて飲んだのも
この入院中。
担任の アソ-先生 が見舞いに来て
3 階から落ちるし、
   成績も落ちるところまで落ちた。
    ここで心を入れ変えて頑張れ!

エンエンとボクを諭してくれた。

( この辺りで有名進学高校コースから
    ボクは完全にはずれてしまう )

なのにバカなボクは悪い姿勢で
マンガばかり見てたせいだろうか
退院すると2.0 あった視力は
黒板の字がよく見えないほどに
落ちてしまっていた。

 

転 落 - 7

 入院以来10日間、お通じが無かったが
なんとなくそんな気分になったので
カーチャンがチリトリの上に新聞紙を敷き
便器にしてくれた。
( なんでトイレでしなかったんだろう?)
恥ずかしいので病室のスミっこで
気張って、気張って
ようやくポッコンっていう感じで
出たと思ったら
カーンという音をたて
チリトリの上を跳ねて

部屋の中を転がっていった。

< 茶色のピンポン玉やー>
ボクとカーチャンは大笑い
退院は近かった。


転 落 - 8

 退院して何日後だったか
足のギブスを外しに病院へ行った。
処置室で看護婦さんに押さえつけられ
何をするんか、と思ったら
お医者さんが円盤状の歯のついた電動ノコギリを持ち
動くと足が無くなるぞ!
と、ボクをさんざん脅してから、ギャーン・ガリガリガリ
すざましい音を上げ、足の石膏ギブスを削りだした。

焦げたにおいが舞い、摩擦熱で足はアッチッチッ

唸るノコギリの恐怖でオシッコもらしそう。

やっと外れた・・・・・
汗ぐっしょりでホーッとしたら、

まだ、しっかりつながっていないから やり直し!
で、また石膏ギブスをつけられてしまう。
ボクは、これに懲りて数週間後
ノコギリやノミ、ペンチ、バールなんかを使い
玄関でバケツの水にギブス足を漬けながら
削ったり、叩いたり、引っぱったりして
自分で外してしまった。
当然、病院へは行かずじまい、リハビリもしていない。
それ以来、歩くときのバランスが何かおかしい。

 ボクはこの事故?で、
足と腰に後遺症を残し
マンガの見過ぎで近眼になってしまう。
元々、目立たずボンヤリした生徒だったから
学校へ戻っても肩身の狭い思いをしたのは
ほんのチョットだけ
後に入学した弟や妹は < アイツの兄弟か?> と
先生に言われ、ずいぶん迷惑したらしい。

昭和の子供たち・やよい町15番地