帰  国

  全校生徒を体育館に集めて
 北朝鮮へ帰国する生徒の
 お別れ会があった。
 
なんらか事情で日本へ来た北朝鮮の子弟で
 この度、家族と新潟から船で祖国へ帰る、
 という先生の説明。
 
 
  知っている生徒はいなかったし
 北朝鮮ってどんな国かも知らなかったけど
 うなだれて壇上に並んでいる彼等が
 すごく気の毒に見えた。
 
  最近、メディアが

 北朝鮮の状況を報道するたび
 あの生徒たちはいま
 どうしてるんだろうと、気になる。

未  来

 なんの自信も持てず
夢や希望も持たず、
勉強も部活もしないで
ボンヤリ過ごす日々。
 
 だから社会へ出るのが恐くって
大人になりたくなかった。
このままの生活を続けれないか

真剣に思っていた。
ナイーブだったわけじゃなく
小心な怠け者だっただけ。
 

 大人は、人生はキビシイなんて言うから
ますます未来への不安が募るばかり。
こんなボクを、トーチャンは
情けない息子だと思っていただろう。
早く社会へ出たい!
中学を卒業したら働く、って
言ってたやつもいたが
とてつもなく逞しい大人に見えた。
  
          

3 8 (サンパチ) 豪 雪

 昭和38年、元旦から降りはじめた雪は
アッという間に玄関をふさいでしまうほど
積もってしまった。

学校での新年祝賀式は中止
それだけは喜んでいたけど

雪は降りやまず、それからは除雪の毎日。

 屋根雪を降ろしたら、家の前の路地の雪は
屋根より高くなってしまう

雪の持って行き場が無い
隣の用水も、空き地も雪の山。
景色が雪ですっかり丸くなってしまった。
トーチャン、カーチャン、ジーチャン、
バーチャン、アンチャン・・・
町内住民総出で夜中まで除雪作業をする。

  雪に埋もれて家の明りも見えず、うす暗く、
ただただ寒い中、家を発掘してる感じ。
2 階から出入りしている家もある。
固く締った雪をノコギリなんかで切り出し
ソリ に積んで千保川まで捨てに行く。
馬に引かせている所もあったけど
やよい町はすべて人力。
ある地区では完全に閉じ込められ
自衛隊が救出活動をした。

 白い悪魔って、この時の雪
これを教訓に除雪の機械化が始まったらしい。

■ 雪を切り出して運ぶのは、エジプトのピラミッドの
 労働者みたいで面白がっていたけど、年配者には
 大変な負担だったと思う。
 便所の汚物の回収はどうしてたんだろう?
 この頃はバキューム・カーになってたけど車が動ける
 ような道路状況ではなかった。

し み た 朝

 冬の快晴の日、放射冷却現象で気温が下がって
しみた朝 は手足が痛いほど冷たい。
積もった雪も表面が凍り、朝日をあびて
キラキラ輝いている。

 登校するとき
田んぼの上を真直ぐ行けばずいぶん近道になる。

当然、ボクたちは田んぼの しみた雪の上を
忍者の気分で歩く。
片方の足に体重をかけないよう
サッサッサッの足さばき・・・・が
たいがい途中でズボッと ガボル ( はまる )。
一度 ガボル と、どうしようもない。

 地獄の雪中 ほふく前進・・・
ズボンについた雪や長靴の中に入った雪が
体温で溶け、手足はメチャクチャ冷たいけど

ラッセルしてるから汗が吹き出し
体中、グッチョグチョ、ハアッハアッ 荒い息で
対岸の道路になんとか這い上がる。

 それでも懲りずに しみた日の朝は
田んぼの雪の上を歩く。

昭和の子供たち・やよい町15番地