カ キ ・ ド ロ ボ ー

町内に柿の木はなかった
だから、ときどき
二上山のふもとの柿畑へ収穫にいく
道具を使わず、木によじ登り手でもぎるほうが
子供らしくって罪が少ないような気がしてた

もぎっている時は、あたりを見回しながら真剣
このスリルも、たまんなかった
たまに背がギザギザの緑の虫に刺され
シナンタロウって言ってたような・・・ )
激痛で泣きそうになったり
枝を踏み折り落ちたこともある
苦労してるわりには甘、渋の区別がつかない
かぶりついたら舌がしびれて、しびれて
なんていうのは毎度のこと
一度、畑のオッチャンが来たので
いなくなるまで木の上でジッとしてたら
陽が落ちてしまって真っ暗になってた
ということもあった
今、振り返ると
オッチャンは木の上に ボクらがいたのを
知ってたんだと思う
 
  
          

秘 密 基 地

二上山の中腹の谷あいに
誰にも教えてない秘密の場所があった
そこには アケビヤマブドウの木があって
季節になると 一人で収穫にいく
肥後の守っていう
折りたたみナイフなんか持ったりして
ちょっとした冒険者っていう感じ
山の中腹から下を見おろすと
少し
大人になったような気分で
心細いけど気持が イイ
持ってかえった収穫は
弟や妹に、
鼻高々 目一杯自慢して分ける

よくあんな所へ一人で行ってたと思う
今では考えられない
  

お む す び コ ロ リ ン

 小学校 最後の遠足は二上山
 遠足の弁当は
 おにぎり2個、ゆで玉子1個、お茶に
 おやつの キャラメル1箱
 
それでもうれしい、楽しい
 頂上近くの小さな祠の前の急斜面で
 お弁当を食べている時
 ボクはうっかりして
 おにぎりを落っことしてしまった
 おむすび・ころりんやー

 笑っって ごまかしたけど
 大事な1個をなくしてしまい
 情けない、もったいない
 女の子がいなければ
 絶対ひらって食べていた
 
●普通は黒い昆布をまぶしたおにぎり
 これは新聞紙にくるむ
●海苔をまいたぜいたくなやつ
 ワラ半紙にくるまれる
●ゆで玉子も大事に紙にくるむ
●おやつの森永ミルクキャラメル
●水筒のキャップには必ず
 方位磁石がついていた
  

缶 ジ ュ ー ス

 二上山を尾根づたいに歩き
 国分浜まで行く
 カーチャンはフンパツして
 缶ジュースを持たせてくれた
 それも 2 本
何で ? > って聞くと
< 最後の遠足やから
    1 本は先生にあげられ >

 めったに飲めない缶ジュースだから
 先生は喜ぶだろう、って期待して
 休憩で先生にオズオズと差し出す
 
先生は、オウッ と言って
 プツン、プツンと穴を開け
 一気に飲み干した
 ボクはカーチャンに申し訳ないような
 釈然としない気持で
 自分の缶ジュースをチビチビいつまでも
 しつっこく飲んでいた
 味はぜんぜんおぼえていない
  

昭和の子供たち・やよい町15番地