イ ン ガ シ

年に一度、天気のいい日に
トーチャンはインガシ(ポン菓子)の店を
家の前で開いた
町内の人が持ってきた米や豆をインガシにする

カアチャンやボクはできたてのインガシに
砂糖をまぶしたりする手伝い
 
ドッカーン > とすごい音の出る器械で
インガシを作るトーチャンを
みんなアコガレの目で見るから
ボクはちょっと鼻が高い

ピンをひっぱたく時はみんなカゴのうしろに集まり
ドッカーンの音とモクモク出る煙りの中、
指で印をむすび

忍術使いの児雷也になる
 

お金のためにやってたんじゃなかったと思うけど
ボクが中学生になる頃
インガシの器械は釣り竿になっていた

家 庭 訪 問

 先生の家庭訪問んとき
 トーチャンがいたりすると戦々恐々
 
 何を言われ、何を言うのか
 心配でたまんない
 
 盗み聞きしていると
 トーチャンが スパルタ、スパルタ って
 聞きなれないことを連呼している

 
 < どんどん、ひっぱたいてケッコー

   スパルタでビシビシやってくれ! >
 
 バカッ! 先生がこれ以上
 その気になったらどーすんだよォ
 今だってメッタメタにやられてんのに!
 汗が出てくる
  
          

台 風

 ラジオのニュースで、台風が来るって聞くと
 トーチャンは、さっそく家中の窓に板貼り
 
 < 古い家やから、そこまでせんでも・・ >
   と、カーチャンが言うと
 < だまれ!古いからするんだ! >
 
 古い家にやるにしてはボクが見ても
 ガンガン、すごく乱暴だと思う

 
 だけど、板貼りした後
 板のスキマから見える外の風景は

 それこそ ムショにいるような
 妙な雰囲気で楽しかった
 
 ニュース映画なんかで
 伊勢湾台風の悲惨な状況を見たら
 トーチャンも、ちょっとまともなんかなァ
 と、思ったりもする

ま る が り

頭を丸刈りにしたのは、6 年生になった春
 
トーチャンに50円やるから、ってだまされて
つい、喜んでしまった

トーチャンが準備したバリカンの歯は極薄の5厘
 
刈りはじめると、後悔しても後の祭り
さっきまでフサフサの マエダカ (刈り上げ) が
みるみる ツルツルの丸坊主になって

軟弱なボクが、ますます情けなく見える
 
弟は不安げにのぞいていたけど、小学校を
卒業するまでトーチャンにだまされなかった
 
次の日、ボクは風邪をひいてしまう
 
以来、ちょっと毛が伸びると
なんだかんだ言ってボクの頭を刈るのが
トーチャンの楽しみとなった

昭和の子供たち・やよい町15番地