夕 涼 み

 蒸し暑い夜は外へ出て
夕涼みが定番。
世間話なんかで過ごす

みな、下着姿のリラックスした格好
パンツやステテコ一枚の オッチャンや
腰巻きだけの オバチャンも普通にいて
よぅ、ボウズ、
  おっぱいすわしたろかー アーハッハー

なんて からかわれたりしてた。
町家が並ぶ間に用水が流れ、ホタルが舞い
路地のあちこちから
話し声、笑い声がこぼれていた
昭和30年代の夏の夜のひととき。
 

 ナ ト コ 映 画

 夏休みの最大イベントは、
広場での、ナトコ映画
(と呼んでいた) の上映会。
町内の老若男女、みーんな 楽しみにしてた。
嵐寛寿郎の < 鞍馬天狗 しか覚えていないけど
杉作少年が新選組に
捕まり危機一髪
天狗が馬にまたがり助けに行く!
っていう、お決まりのシーンに
子供たちは はやく! はやく! > の大合唱
天狗が背後の
敵に気づかないと
< うしろー!あぶないぞー! >
こぶしを振り上げ大騒ぎ。

 大人は < すわれ! 静かにしろ! って怒鳴る。
 はしゃぎ過ぎてケガをして
 親にひっぱたかれ、泣きっ面にハチ。
 
  そんな夏の夜の、幻想のひとときが終わっても
 興奮さめぬ子供たちは
 鞍馬天狗になりきって家路につく
 翌日はさっそく チャンバラ・ごっこ・・・・・。

線 香 花 火

 夏の夜は花火。
でも、線香花火ばっかり。
こよりの先っぽに火をつけると
ささやかな火花の後
小さい太陽のような火の玉が
カチカチと音を出し
星をたくさん生み出しながら
だんだん大きくなって
最後は自分の重さに負け
落っこちて、おしまい。

 だれが 一番長く光らせてれるか
競ったりしてたけど・・・・

本当は、バチバチッって派手に火花を吹く
花火をやりたかった。

花 火 大 会

 いつからか花火大会が
開かれるようになった。
高い建物も、賑やかな灯りも無いころだから

遠くからでもよく見える
田んぼの稲の葉かげにはホタルが舞い
空には大輪の光の花
ド〜〜ン という音が深い闇に響きわたる。
アイスキャンディーでも舐めながら
見物できれば最高だった。
こんな贅沢なシチュエーションは
ないでしょ?
蚊だけには困って
蚊取線香をもっていっても
あちこちがボコボコ・・・。

昭和の子供たち・やよい町15番地