柱 時 計

 出窓の横に
ゼンマイ式の柱時計がぶら下がってて
定期的にネジを巻くのは
ボクの仕事になっていた。

 右が運行用で、左は音のネジ
ある日、ボクはうっかり
左のネジを巻いてしまう。

ボンボン鳴るのがうるさいから
巻くなって言われていたのに・・・
それからは ゼンマイがゆるむまで
昼でも夜中でも ボ-ンボ-ンと鳴り続け
そのたびトーチャンに文句を言われる。
独りっきりで部屋にいる時
柱時計が鳴ると、ちょっと怖くって
ボクもまいってしまった。

夢 遊 病 ?

 弟は、夜中に眠ったまま
歩きまわる事が、たびたびあった。
玄関のカギを開け
近所を一回りして
寝床へ戻るだけならいいけど、
玄関前のちり箱か
台所の炭箱のどちらかに
必ずオシッコをする。
朝、言われても、本人に記憶は無い。
弟は、よくオネショをして叱られていたが
それが神経にさわって
夢遊病になったんじゃないか、って
カーチャンとトーチャンは、心配してた。
 

 

 今日もイジメられ
どうでもいい事で
先生にも引っぱたかれ、ウンザリ。

学校へ行きたくない・・・・。

布団に入って、現実じゃなくって
夢の中で生きれたらって妄想する。

 クラスで一番、勉強も運動もできて、
クラスで一番、ケンカが強くって、
クラスで一番、家が金持で・・・、
先生に、いっつもホメられて、
イジメる奴等を、やっつけて、
テレビを買って・・・・
情けない 夢というより
妄想に興奮して
体中に力が入り 眠れなくなってしまう。
 学校が勉強だけじゃなく
人間関係も学ぶ所だとすれば
ボクは、ずいぶんと出来の悪い
生徒だった。

 無 い ? 

 墓参りにいった時、トーチャンに
  人が死んだら、どーなるがけ?
聞いたら
  無だ、なんにも無くなる!
って、答えた。
トーチャンらしく
カッコつけたんだろうけど
子供相手なんだから
せめて天国とか浄土とかに、って
言ってくれればよかったのに・・・。
有るのはいくらでも想像できるけど
なんにも無い、というのは想像できない。

吸い込まれるようで、怖くって
考えると眠れなかった。

今でも < 無 > ってのは
どういうものなのか、わからない。

昭和の子供たち・やよい町15番地