朝 はやく < なっとー、なっとなっと、なっとゥ〜〜♪ > の声が聞こえたら、急いで外へ買いに走る。 < カラシ は? > アルマイトの弁当箱を開けて 聞くアンチャンに < たくさーん・・・・ > と言っても ちょっとしか、くれない。 たまにト-チャンが買うと、たっぷりもらう。
あの頃はみな、ワラにくるんだ ワラ納豆。 匂いも、豆の味も、濃かったよね。 ワラを広げて、納豆を取り出すのも 楽しい作業だった。
農家のオバチャンが朝早くから リヤカーに野菜や花を積んで 一軒一軒の玄関を開け < オクサーン、野菜いらんけー> と、声をかけ町内をまわっている。 子供ながらに 大変だろうなー と、思ってたけど、 オバチャンは なじみのオクサンとお喋りするのが 楽しかったよう。 こんな風景は今でもときどき見かける。
< 奥さん、昨日 ムショ 出たばっかりで 仕事がなくって困ってる、子供を食わせれねェ ゴムヒモ買ってくれヨ > 恐い顔してスゴむ 押し売りのオッチャンがよく来た。 たまたま、トーチャンがいる時に来たのが、まずかった。 モジモジしてるカーチャンの横にヌッと出て < ムショ帰りがどうした! オレァ 満州帰りだ 満州はなぁ、ムショどころじゃねーんだバカヤロー テメェ どこのモンだ、いってみろ!> ベランメエ調でまくしたてると。 押し売りのオッチャンは < どうも、アニサン、すんませんでした・・・ > スゴスゴ 帰っていった。 ボクは、ふたりの男の変なやりとりを 恐いものみたさで、うしろで見ていた。 あのオッチャン、ほんとに子供いたんだろうか?
昭和の子供たち・やよい町15番地