家 の ま わ り  

 町といっても
まわりは田園風景が広がっていて
田んぼ や
用水には
メダカフナドジョウカメ
カニエビシジミタニシ・・・
草むらや木々には
セミバッタスイッチョン
トンボチョウチョ・・・・
ミミズ、トカゲ、ヘビ もいる。
夏休みの理科の宿題の
標本なんかカンタンに作れるほど
昆虫がウジャウジャ
ハエもたくさん翔んでいた。

 家が立て込み、用水は暗渠となり
いつの間にか、そんな生き物を
目にすることが少なくなってしまう。

木 炭 バ ス

 家の裏の国道8号線は
まだ砂利道。
ときどき、木炭バスが
煙をはきながら走ってた。

ボクたちの足でも
追いつくくらいの
スピードで
ノロノロ、ガタゴト走ってた。
自動車が珍しいボクたちは
駅馬車を襲撃する
インディアンの気分で
雄叫びをあげながら追いかける。


ヤ ギ の 乳 

 国道沿いに
ヤギを飼っている農家があって
ときどき

ヤギの乳を買いに行かされる。
その行き帰りには
かならずヤギにイタズラをしてた。
湧かして飲んでいたけど
味の記憶はまったく無い。
牛乳を 3年生の給食で初めて飲んで
すっごく 感動してたから
ヤギの乳は
あんまり美味しくなかったんだろう。

戦 争 ゴ ッ コ

 大人は子供に
肉弾三勇士やカミカゼ特攻隊を
見てきたように話し
原爆を落とされたから負けたんだ
次ぎに戦争したら 絶対に負けん!
なんて、平気で言ってた。
それを聞いてる子供たちは興奮し
世界一 強い日本軍になって戦争ゴッコ。
階級は、家から持ち出してきた
戦争の遺物で決まる。



 ボクは革製の弾丸入れだったけど
隣町の同級生はサーベルを持ってきた。
当然、彼が大将になり
先頭に立って隊列を組み、のし歩く。
空襲を受けなかった町だったから
イイ気なもんだ。
家に帰ったサーベルの大将は
親に さんざん 引っぱ叩かれ
家から放り出されたらしい・・・・・



昭和の子供たち・やよい町15番地