転 落 - 5

入院初日、峠だということで
トーチャンがベッドの下にゴザを敷いて
泊まってくれる

生まれて初めての、病院の固いベッドで
なかなか寝つけずにいた夜中
寝返りをうったひょうしに
トーチャンの上に落っこちてしまった

全身打撲の痛みやら足のギブスやらで

動けないし、声も出ない

トーチャンはすっごい イビキをかいていて
なかなか気づいてくれない
しばらくトーチャンの上に乗っかったまま・・・


へらず口をたたいていても

トーチャンは心配し、疲れてたんだろうと思うけど
この時は何のための付き添いなんだ、と

えらく悲しかった

転 落 - 6

若いから回復も早く
内臓出血もすぐ止まり
病室も変わってひと安心

そうなると病人?は
あれが食べたい、これが飲みたいと
わがままになる
初めてコカコーラなんて飲んだのも
この入院中

ある日、担任の アソ-先生が見舞いに来て

< 3 階から落ちるし、
   成績も落ちるところまで落ちた
    ここで心を入れ変えて頑張れ! >
エンエンとボクを諭してくれた

( この辺りで有名進学高校コースから
    ボクは完全にはずれてしまう )


なのにバカなボクは悪い姿勢で
マンガばかり見てたせいだろうか
退院すると2.0 あった視力は
黒板の字がよく見えないほどに
落ちてしまっていた

 

転 落 - 7

入院以来10日間、お通じが無かったが
なんとなくそんな気分になったので
カーチャンがチリトリの上に新聞紙を敷き
便器にしてくれた
( なんでトイレでしなかったんだろう?)

恥ずかしいので病室のスミっこで
気張って、気張って
ようやくポッコンっていう感じで
出たと思ったら
カーンという音をたて
チリトリの上を跳ねて

部屋の中を転がっていった


< 茶色のピンポン玉やー>
ボクとカーチャンは大笑い
退院は近かった


転 落 - 8

退院して何日後だったか
足のギブスを外しに病院へ行った

処置室で看護婦さんに押さえつけられ
何をするんか、と思ったら
お医者さんが円盤状の歯のついた電動ノコギリを持ち
< 動くと足が無くなるぞ! >
と、ボクをさんざん脅してから、ギャーン・ガリガリガリ
すざましい音を上げ、足の石膏ギブスを削りだした


焦げたにおいが舞い、摩擦熱で足はアッチッチッ

唸るノコギリの恐怖でオシッコもらしそう

やっと外れた・・・・・
汗ぐっしょりでホーッとしたら

まだ、しっかりつながっていないから やり直し!
で、また石膏ギブスをつけられてしまう

ボクは、これに懲りて数週間後
ノコギリやノミ、ペンチ、バールなんかを使い
玄関でバケツの水にギブス足を漬けながら
削ったり、叩いたり、引っぱったりして
自分で外してしまった
当然、病院へは行かずじまい、リハビリもしていない
それ以来、歩くときのバランスが何かおかしい

ボクはこの事故?で、
足と腰に後遺症を残し
マンガの見過ぎで近眼になってしまう
元々、目立たずボンヤリした生徒だったから
学校へ戻っても肩身の狭い思いをしたのは
ほんのチョットだけ
後に入学した弟や妹は < アイツの兄弟か?> と
先生に言われずいぶん迷惑したらしい

昭和の子供たち・やよい町15番地